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あれこれ

「ショーシャンクの空に」感想

ずっと気になっていた映画。

まだ咀嚼しきれていない部分もあるが、素晴らしかった。

 

 

物語は刑務所初日、「囚人を囚人たらしめる儀式」から始まる。刑務所に移される初日の様子が丁寧に描かれる。

まず刑務所に到着した囚人たちは腰縄をつけられて一列に並べられ、パリッとしたスーツをまとった所長に「You are convicted felons. That's why the've sent you to me.」(君たちは罪人だ。だからここに送られてきた)と言われる。次に檻のようなシャワー室で不作法にシャワーと消毒剤をかけられる。人間というよりは家畜に扱いを受ける様子が徹底的に描かれ、看守-囚人という関係性が強調される。冤罪で投獄されたアンディーに待ち受ける現実の厳しさにぐっと辛くなる。

 

アンディーが看守-囚人という関係性に甘んじる人物ではないことは、ビールを振る舞うシーンで明確になる。アンディーが看守の相続手続きを申し出ることによりゲットしたビールを、囚人たちが満足そうにビールを飲み、それを満足げに眺めるアンディー。レッドの考察通り、その目的は「just to feel normal again」なのだろう。

ショーシャンクの空の下でくつろぐ囚人たちは、囚人というよりはリバプールあたりの工場労働者に見える。

立派な図書館を作るシーン、音楽を流すシーンなどアンディーが刑務所内の規律やルールを乗り越える様は実に軽快で楽しい。最終的には19年間掘り続けて作ったトンネルを通って脱獄を果たし、最初から最後まで希望を捨てないアンディーに心を動かされる。

 

一方で、長期収容者が社会に出たときに直面する難しさにも触れられる。刑務所内で比較的楽しそうにすごしていた図書係は、仮釈放後の生活に不安を覚えて自殺してしまう。長期的に人間の心が組織に飼われるということを端的に示しており、アンディーとは対照的な様子が描かれる。

 

物語のクライマックスは、レッドが仮釈放審査にて本当の更正について語るシーンだと思う。無実の罪で投獄されたアンディーとは異なり、レッドは殺人者だ。

レッドによれば「更正」という言葉は「A politician's word」である。自身の罪について一度たりとも忘れておらず、その感情とともに生きていると話す。そしてそれは、「囚人」であるからではないし、審査官がそうすべきと考えるからではないのだと。

「There's not a day goes by I don't feel regret not because I'm in here and because you think i shoud. I look back on the way I was then. a young, stupid kid who commited that terrible crime.I want to talk to him. I want to try to talk some sense to him. tell him the way things are. But I can't. That kid's long gone and that. I gotta live with that.」

 

 

この映画では友情関係のすばらしさもさることながら、刑務所という社会的な装置を題材に、人間が人間として生きるために何が大切なのかを訴えている。

刑務所ほど極端な装置でなくても、私たち人間は会社や学校など社会的な装置の中で日々生きている。この映画は、私たちがどう生きるかを問いかける映画だと思った。